民進党政務調査会長 足立信也

 本日、与党の平成30年度税制改正大綱が決定された。

 税制は社会保障制度などと同様に社会を創る手段であり、政党にはあるべき社会像とその手段としての税制改革の大きな絵姿を示す責任がある。民進党は昨年12月に「民進党税制改革の基本構想-ふつうの人から豊かになるための税制改革―」を決定し、税制改革の中長期的方向性を示した。翻って与党大綱は、改革の方向性を示さず、小手先の改正、弥縫策に終始しており、政党としての責任を全く果たしていない。以下、具体的な項目について、考えを申し述べる。

1.個人所得課税

  • 与党大綱は、所得税制の抜本改革とは程遠い。一部のサラリーマンにのみ負担を求めるだけでなく、所得税制をいたずらに複雑化するものであり、「公平・中立・簡素」という租税の大原則からかけ離れた姿にするものである。
  • 所得再分配機能の回復・強化、ライフスタイルに中立で公平な税制の構築、労働力人口増加を促す成長戦略などの観点などから、人的控除の整理を含め、まずは「所得控除から税額控除へ」の転換を図り、さらには「税額控除から給付付き税額控除へ」と税体系を大きく変えていくべきである。
  • 申告納税者の所得税負担率を見ると、1億円超から急激に負担率が下がっている。これは分離課税となっている金融所得に軽課していること等によるものである。所得再分配機能の回復・強化の観点から、金融所得課税の税率を5%引き上げるべきである。

2.法人所得課税

  • 法人実効税率については、すでに役割を終えた租税特別措置の抜本的な見直しによる課税ベースの拡大などを含め、適切な代替財源を確保できるのであれば、中長期的には引き下げを検討することは否定しない。しかしながら、実需の乏しい経済状況に鑑みれば、税率引き下げによるまっとうな雇用増加や賃金の実質ベースでの引き上げ、さらには真に経済の好循環につながる設備投資の誘発効果が見えておらず、現段階でさらに引き下げることは適当とは言えない。また、いたずらに国際的な法人税引き下げ競争に乗るべきではなく、むしろ国際社会と協調してタックスヘイブンの悪用などの課税逃れへの対策を強化すべきである。

3.事業承継税制

  • 雇用を支え、地域経済の中核となっている中小企業や、地域の医療を支える医療機関などの事業承継の円滑化を推進するため、減税額の拡大や雇用維持の要件の緩和など、大胆な見直しを行うべきである。

4.自動車関連諸税

  • 与党大綱からは、不条理で過重な税制を解消し、ユーザーの負担を確実に軽減するという重要課題が抜け落ちており、支持できない。
  • 自動車取得税廃止・自動車重量税の当分の間税率の廃止、自動車税・軽自動車税の税率引き下げを含む車体課税の抜本見直しを早急に行うべきである。

5.地方税財政

  • 税源の偏在性の是正は、地方税財源の確保とともに重要な課題ではあるが、地方税の応益原則を踏まえ、検討を進めるべきである。

6.寄付金税制

  • 全ての国民に「居場所」と「出番」が確保され、市民や企業、NPOなど様々な主体が「公(おおやけ)」に参画する社会を再構築していくことが重要である。そのため、新しい公共の担い手を支える税制をさらに拡充するべきである。NPO等に対する支援税制(市民公益税制)について改善を図り、大学等に対する寄付金税制を充実させるべきである。

7.医療機関・介護施設等の控除対象外消費税

  • 医療機関・介護施設等の控除対象外消費税問題について、課税対象とせずに、適切な措置を講じ早期に解決を図るべきである。

8.その他

  • 森林環境税については、その趣旨については一定の意義を認めるが、その使い道や、すでに自治体レベルで同様の税を導入している都道府県等との調整などについて、納税者にとって十分納得のいくものとなるよう、丁寧かつ十分な検討を行うべきである。
  • 出国税については、地方経済の活性化等の観点から観光インフラや観光資源の整備促進に財源を確保する必要性は認めるが、本来、その財源は一般財源に求めるべきである。出国税(国際観光旅客税)など、国境を越える人や金融資本の移動に掛けられる税は、これまでの国際連帯税の議論や諸外国の導入実績等も踏まえ、主として気候変動や感染症対策などの国境を越えた地球規模課題への対策(SDGsやパリ協定など)にこそ使われるべきと考える。
  • たばこ税については、あくまで健康の観点等から検討を行うべきであり、紙巻きたばこと、副流煙を出さない加熱式たばことを一様に扱うべきではない。
  • 郵便貯金銀行、郵便保険会社、日本郵便株式会社については、民営化の進展も踏まえつつ、ユニバーサルサービスの提供義務に応じた税制等の措置を検討の上、所要の措置を講じるべきである。

 民進党は次期通常国会において、上記の項目はもちろんのこと、国民の声、各種団体の要望を踏まえ、政府与党をただしていくとともに、「税制改正の基本構想」に基づき、ふつうの人から豊かになるための税制改革の実現に向け、尽力していく。

以上

PDF「平成30年度税制改正大綱について」平成30年度税制改正大綱について