民進党をはじめ野党6党は16日、「教育現場不当介入問題野党合同ヒアリング」を国会内で行ない、前川喜平前文部科学省事務次官が名古屋市の公立中に講師として招かれて総合学習の一環で行った公開授業について、同省が授業内容に関する報告や録音データの提供を名古屋市教育委員会(以下、市教委)に要請していたことに関して、同省担当者から話を聞いた。

 文科省は1日、市教委にメールでこの問い合わせをしており、そのなかで前川氏について「文部科学事務次官という教育行政の事務次官という教育行政の事務の最高責任者としての立場にいたが、いわゆる国家公務員の天下り問題により辞職し、停職相当とされた経緯があり」「また、報道などにより文部科学事務次官在任中にいわゆる出会い系バーの店を利用し、それで知り合った女性と食事をしたり、時に金銭を供与したりしていたことなどが公になっている」「こうした背景がある同氏について、道徳教育が行われる学校の場に、また教育課程に位置づけられた授業において、どのような判断で依頼されたのか具体的かつ詳細にご提示ください」などと求めている。

 ヒアリングでは冒頭、文科省の担当者にメールのやりとりについて説明を求め、文科省からはメールのコピーが資料1(3月1日に文科省が名古屋市教委に送った問い合わせメール)、資料2(3月5日に名古屋市教育委が回答したメール)、資料3(3月6日に文科省が名古屋市教委に送った再問い合わせのメール)、資料4(3月7日に名古屋市教育委が回答したメール)が示された。

 出席議員からは、教育基本法第10条にある「不当な支配に服すること」に当たるのではないかという観点から(1)いかなる法律上の根拠に基づいて市教育委に問い合わせをしたのか(2)民間人が講師を行う場合同様に調査した例はあるのか(3)教育現場への不当介入につながるが過去にも同じような調査を行った例はあるのか(4)誰の指示で行ったのか(5)全国のすべての市立中学の案件に文部科学省の目が及ぶとは考えにくいが、どういうきっかけで調査しようということになったのか(6)自治体議員も含めて政治家の関与はなかったか(7)教育現場への不当介入につながる不適切な行為と思わなかったのか(8)報道は誰が最初に知り、なぜ調査しようということになったのか――等の質問が出された。

 文科省の担当者は法的根拠に関して、「文部科学大臣は都道府県又は市町村に対し、都道府県委員会は市町村に対し、都道府県又は市町村の教育に関する事務の適正な処置を図るため、必要な指導、助言又は援助を行うことができる」とある「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」によるものだと説明した。

 出席議員からは同法律の定めは「事務の適正な処置を図る」ための指導等であり、今回の授業の件はそれには当たらないとの指摘があった。また、文科省の担当者は、新聞報道を見て調査を局長の判断で行い、文科大臣への報告は11日だったと回答。この流れをもってしても、法的根拠で示した「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」にある「文部科学大臣は…行うことができる」との定めに反するとの指摘が出席議員から出た。外部からの問い合わせがあって前川氏の授業を知り新聞を確認したのかとの問いに明確な回答はなく、政治家の関与については「確認する」との回答だった。

 調査について文科大臣がどういう認識を示したかについては「調査そのものは権限に基づく適正な確認だった。ただ、表現ぶりについては少し問題があったとの指導があった」と文科省の担当者は説明した。録音データの提供を求めたことについては「どのようなねらいでこの方を呼んだだのか、この授業全体がどのようなことで行われたかを正確に把握する必要があると思ったから」などと説明した。

 誰がいつその報道を見たのか、前後に政治家などから話があったのかどうか、文科大臣は11日まで本当に知らなかったのか、誰がやるべきだと言って始めたのか等について時系列での報告を文科省に求めるとともに、(1)新聞報道を見る前に政治家を含めて外部からの問い合わせはあったか(2)文科大臣の指示はなかったということで間違いないか(3)民間人が講師を務める授業内容は逐一文科省が確認していくのか(4)前川前事務次官の行動だから確認したのか――等について次回のヒアリングで回答するよう求めた。

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PDF「資料2」資料2

PDF「資料3」資料3

PDF「資料4」資料4

PDF「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」地方教育行政の組織及び運営に関する法律