自身も候補者でありながら各地を応援に回った蓮舫代表代行と、総計2万1千キロを巡りマイクを握った山尾政務調査会長の2人に、参院選挙の激戦を振り返ってもらった。民進党の声は有権者にどのように届いたのだろうか。

「一緒に頑張ろう」と市民が主体的に政治を動かそうとし始めた

 ――有権者の皆さんから国政、あるいは民進党へ向けて、どんな期待や要望を感じましたか。

蓮舫代表代行

蓮舫代表代行

 蓮舫 今回残念ながら現職で惜敗してしまった仲間もいますので、われわれに足りない部分を冷静に分析し、次の衆院選挙に備えなければいけないと思います。ただ、物質的豊かさを唱えるアベノミクスを否定はしないけれど、それよりも政府が勝手に進める年金保険料の株式運用などによる「消された年金」や不安定雇用、子育てなどの自分ではどうしようもない不安に対する安心の整備を民進党に果たして欲しいという声が、確かにあったと思います。

 山尾 そうした不安を希望と安心に変えることで、地域の中でモノとお金が流れ、結果として経済政策につながっていくのだと私たちは訴えてきました。演説を聞いて下さった方たちにはかなりストレートに届いたと思います。それに対して「頑張って」ではなく、「頑張ろうね」という声を多くいただいたのも、うれしかったですね。
 蓮舫 確かに、「私たちも一緒に頑張るから頑張って」と、双方向につながり始めていますね。
 山尾 今後は、直接の声を届けられなかった大多数の人たちへ、どのように伝えていくかが大事な課題ですね。東高西低の現状も、個々の候補者の努力の量や質というより党全体で受け止めるべき課題だと思います。私も期間中は全国を回りましたが、北海道・東北の風をいかに西に引っ張ってこられるかに重い責任を感じていました。
 蓮舫 東北で勝たせていただいた1人区は、生活基盤に農業があるところですから、われわれの農業者戸別所得補償制度が見直され、評価されたという実感があります。併せて、TPPで政府が交わした約束の中身が見えない不安。これは北海道の選挙区も含めて支持につながったと思います。ただ振るわなかった西側では、有権者に何を伝えるかをもっと考えなければいけませんでした。愛媛や徳島・高知も残念ですね。県民の皆さんに熱い選挙運動を展開していただいたのに、票が届かなかったのは、自治体議員や国会議員がいないために、ネットワークが決定的に欠けてしまっている状況もあると思います。

山尾志桜里政務調査会長

山尾志桜里政務調査会長

 山尾 そうですね。ただ今回は本当に県民、市民の皆さんが選挙を戦う同志として支えてくれました。有権者の政治への関わり方が、この数年で明らかに変わりつつあると感じます。背景には去年の安保法制や今年の待機児童問題があると思いますが、市民が主体的に声を上げて政治を動かそうという新しいエネルギーに、われわれは応えなければいけませんね。

民進党の政策、方針をどのようにポジティブに伝えていくべきか

 ――党への比例票が13年(当時は民主党)と比べ非常に伸びた一方で、野党の政策がよく分からないから、とりあえず政権与党に入れたという声が若い有権者からも聞こえたのは残念でした。党の政策をどのように伝えていくべきでしょうか。
 蓮舫 政策を実現できるのは与党ですから、多くの国民は今の生活が厳しいからという部分で判断し、政策を確実にしなければということでとりあえず与党を選ぶ。では野党は安保以外で何があるのかと考えたとき、野党共闘のデメリットはあったと思います。われわれは長野や山梨の結果も踏まえて次の総選挙、これは県単位で選ぶ参院選とは違って小選挙区になりますから、そこで何を訴えていくかをあらためて考えなくてはいけません。今回は良い意味で、次の総選挙のイメージへとつなげることができる選挙でした。
 山尾 民進党は野党第1党であり、対案政党であることをもっと明確に打ち出せばいいと思うんですね。そこが私も含めて力不足でした。先の国会では戦後初めて、政権与党が出してきた法案よりも、私たちの対案の数が上回りました。民進党が提出した議員立法が64本で、政府提出法案は56本でした。その多くが与党の審議拒否や反対否決となったのだということ、そして私たちは今後も対案を提案し続けるということを、胸を張って国民の皆さんにお伝えすべきだと思います。
 蓮舫 演説は批判から入るという野党ぐせが付いている議員が数多くいます。批判は共感を呼びません。私は今回、徹底して批判をしませんでした。評価をした上で対案を出し、どちらかを選んでくれと伝えました。これは私の得票につながっていると思っています。民進党が次に生まれ変わるとしたら、すべての国会議員と候補予定者が、自身の演説を見直すことです。自分の演説の映像を一般の人たちに見せて、共感を生むか生まないか。SNSでは民進党からは批判しか聞こえてこないという声もあったようですが、動画サイトユーチューブで公開した私の演説は批判されることはなく、肯定していただいた感じでした。
 山尾 せっかく対案を出しているのに、演説が批判だけでは本当にもったいないし、有権者が知りたい情報を提供できていないことになってしまう。現政権の問題点など、感じている有権者はすでに分かっているのでね。
 蓮舫 そう、「ではどうするのか」が聞きたいんですよね。
 ――自民党との違いをアピールするとき、ポイントはどこでしょうか。
 蓮舫 しがらみがないということです。やはり今の政権は政官業の癒着で動かしているから、政策効果が出てこない。一括交付金を復活させ「地域それぞれにお渡しするから考えて使ってくれ」となったとき、初めて自分たちで考えて動くようになると思うんですね。考えなくてもヒト・モノ・カネがやってくる時代は終わったのに、その残像にとらわれている一部の人の考えを変えるには、それしかないと思います。
 山尾 政治の課題がどこにあるかですね。残念ながら現政権は、政治家自身がやりたい課題が先にあって、それを上から押し付ける政治になっている。私たちはそうではなく、課題は常に国民の声の中にあり、それをキャッチして解決していくことが政治だと考えます。「民進党」という名前になったとき良いなと感じたのは、それを鮮明にできたから。国民が声を上げて政治を変えようという新しい民主主義の動きと、つながっていける政党だと思います。

若者の政治参加、女性議員の躍進「政治は暮らし」の意識が空気を変える

 ――10代、20代の若い有権者へメッセージを伝えるとしたら。

蓮舫代表代行

蓮舫代表代行

 蓮舫 政治は遠くないし、自分事だということに尽きます。奨学金や待機児童の問題も、不安定雇用も、まさに今、あるいは数年後の自分自身の話ですよね。しかし、政権与党からは基本的には自助であると強いられ、仕事は自分の努力次第だし、結婚、出産ができないのは仕方がないとあきらめが広がっているのが今の20、30代です。でも「それは政治で解決できる課題なんだ」とリアルな生活とシンクロした時、投票に動く人たちは多いはずなんです。私の選挙を手伝ってくれた18歳の若者たちはマイクも握りましたが、彼らの変化は明らかでしたよ。奨学金の借金は恥ずかしいものだと思っていたけれど、実は国から突き放されていたのだとしゃべりながら気付いて、泣いた人もいました。

 山尾 私の場合、「保育園落ちた」のブログを総理にしっかり伝えて欲しいと背中を押してくれたのは、当時インターンで来ていた19歳の女子大学生なんですよ。そのひと押しが、半年で待機児童問題を社会の大きなテーマへと押し上げたわけです。若い人が動けば政治が動くというダイナミズム、面白さを皆で共有して、未来をつくっていこうと伝えたいですね。
 ――この対談の機会に、お2人がお互いに聞いてみたいことがあれば。
 山尾 私が政調会長になるとき、新しい役割や責任は大変だけど、面白いものだと言ってくださいましたよね。面白がるように、と。大変さを面白さに転化する秘けつはあるんですか。
 蓮舫 私は1年生議員のときからいろんな役目をいただくことが多く、そうやってずっと生きてきましたからね。面白いことをつくり続けるのが政治です。皆が暗い政党はダメなんですよ。終わったことはそれとして、前向きに変えていこうよと。
 山尾 明るい方がいいですよね。
 蓮舫 プレッシャーとの戦いを面白がることができる能力は、政治家全員に求められると思いますよ。
 山尾 そうですね。頑張りましょう。
 蓮舫 うちの19歳の双子はもう自力で大丈夫ですが、山尾さんはお子さんがまだ小さいですよね。どうやり繰りしているのかなと。
 山尾 5歳の息子で、昨日からじんましんが出てしまったので、今朝は病院に寄り、保育園に連れていって、その足で議員会館に来ましたよ。まあ、これが日常です。
 蓮舫 こういう苦労を男性議員はもっと分かるべきですね。子育てに理解がある人は民進党には多いですが、男性全般に言えることは、子どもをお風呂に入れるといったことだけではなく子育てを深めてほしい。
 山尾 日常のなかに子育てがあり、政治があるから「政治は暮らし」と言えるのですが、そこまで実感がない男性議員は多いかもしれませんね。でも今回の参院選で女性議員が増えましたね。参院全体で15%から20%、民進党はなんと14%から22%に上がりました。
 蓮舫 おお(拍手)、うれしいですね。

山尾政調会長

山尾政調会長

 山尾 これは大きいですよ。多分、空気を変えますね。男女同一賃金や男女同数候補、男女交互名簿も法律で提案しているので、コツコツ積み重ねていきたいですね。
 蓮舫 例えば選択的夫婦別姓も含め、女性が活躍できる社会に向け、秋以降の国会で何から行うかを優先順位を上げて組み立てていかないと。民進党が政治の空気を変えていきたいと思います。

(民進プレス改題9号 2016年8月5日号より)

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