米国大統領選挙の結果を受けて、民主党政権で外務大臣を務め日米関係の発展に尽力してきた前原誠司衆院議員に米国外交及び日米関係の行方について聞いた。


 ――トランプ氏が次期米国大統領に選ばれたことについてどう見るか。

 正直言って予想外の結果でした。ただ、誰が大統領になってもわが国にとって米国は、唯一の同盟国であり、最も重要な国ですので、うまく付き合わないといけないということに尽きると思います。われわれは、このような結果になった背景、理由について分析をしないといけません。

TPPは風前の灯

 ――トランプ新大統領誕生によって米国の外交・安全保障政策はどのような方向に向かうのか。
 確実に言えるのは、TPPは風前の灯だということ。では自由貿易をどう担保していくのか。その答えがありません。米国が貿易面でより保護主義的、閉鎖的になることに備えなければいけません。「強いアメリカ」「アメリカ第一主義」という方向性の中で、気を付けるべきは「強いドルを望んでいない」ということです。日本や中国を「通貨操作している」と批判しているように、金融政策面で要求が厳しくなる懸念があります。安全保障政策面では、費用面なのか、行動面なのかは別にして、日本に対して同盟国としての責務を強く求めてくる可能性があります。

過去の発言に過剰反応しない

 ――変革が予想されるトランプ政権に対して日本はどう向き合うべきか。
 来年1月20日の大統領就任式まで2カ月。トランプ氏はビジネスで成功した実績があり、そういう感覚を政治に入れていくことは、ある意味で大切かもしれません。ただ、外交、安全保障分野は、お金の多寡だけで決まるものではありません。戦略的な重要性はお金に換えられないものです。その点をまずしっかりと理解してもらうことが大事だと思います。
 一方でビジネスマンは全体を把握できた時「これは損だ」と思ったら前言を撤回することがあります。私たちはトランプ氏の過去の発言に過剰に反応したり、とらわれることなく、日本の国益に基づいて米国と引き続き話し合っていくことが重要だと思います。

自立の比重を高めていく

 ――米国が「孤立主義化」を深めた場合、日本は、どのように外交を推進し、自国を防衛していくべきか。
 外交は自主的、自立的に行うことが極めて重要です。米国と国益が異なる対応をすることも当然ありますので、外交の独自性を引き続き実践していくことが大事です。トランプ新大統領の誕生によって、その点により重きを置く必要性が出てくるかもしれません。
 一国の国力は、経済力、軍事力、ソフトパワーと言われる文化力で測られますが、経済力、軍事力が圧倒的に物を言います。これまで日本は、軍事力で米国に過度に依存してきた歴史があります。インテリジェンス、打撃力、抑止力、装備で米国に頼ってきました。それを一朝一夕に変えることはできません。今まで通り日米関係を堅持し、米国の過度の警戒感を生まない努力をしながら、外交と同様に防衛でもより自立の比重を高めていくことが重要です。
 民主党政権では、独自の測位衛星である準天頂衛星の打ち上げや武器輸出3原則の見直しに取り組みました。これは共同開発、共同生産に道を開くもので、日本の防衛産業の基盤を維持・強化するという意味で有用な政策でした。これらは自立の第1歩と考えて行った施策です。今後も自立の比重が高まるような取り組みが必要だと思います。

(201611月10日インタビュー)

(民進プレス改題16号 2016年11月18日号 7面より)