藤田幸久ネクスト外務大臣は1月31日から2月6日まで、トランプ政権の動向調査と関係構築を目的としてワシントン、ニューヨークを訪問した。

米国の良心が司法の独立と地方主権を守る

 2月2日に開催された「全国祈祷朝食会議」(NPB)に出席しました。NPBは1953年から毎年開かれ、大統領、上下両院議長、米軍統合参謀長などが出席します。米国議会では上下両院議員が一緒に祈る朝食会が毎週開催され、その年次総会がNPBです。
 米国はキリスト教徒が多数を占める国ですがNPBだけは各国からさまざまな宗教の議員などが招かれます。今年はヨルダン国王をはじめ、世界の約140カ国から3千人以上が出席しました。

トランプ大統領


 トランプ大統領は基調講演で「平和を愛するイスラム教徒がISIS(※)によって虐殺されている。ユダヤ人を根絶しようという脅威も存在する。ISISによりキリスト教徒に対する虐殺も起きている。全ての国はこれに対して敢然と闘わねばならない。私はわが国の宗教の自由を守るために全力で闘う。アメリカは未来永遠に、全ての宗教が尊重され、全ての国民が安全と感じる寛容な国であり続ける。全ての市民が迫害や暴力の恐れがなく自身の信仰を実践できる国。自由、とりわけ宗教の自由が栄える国となる」と演説しました。恐らく大統領就任後最も謙虚で寛容な演説で、多くの喝采を浴びました。
 しかし、同時期にトランプ大統領はイスラム圏7カ国からの入国を禁止する大統領令を発動しました。これに対して、国民、議会、裁判所が闘いを挑んでいます。各地の空港などで入国禁止に抗議する集会が開かれています。また、ワシントン州と連邦控訴裁は大統領令取り消しの裁決を下しました。司法の独立と罷免を覚悟で闘う裁判官の良心に深い感動を覚えます。
 私はふと、12月に日本の裁判所が「国の外交政策は政府が判断するので地方自治体はそれを否定してはならない」という論理で、沖縄県による辺野古沖の埋立承認取り消しを棄却した対応とは、司法の独立と地方主権の両面でまるで異なると感じました。
 NPBに出席していた翁長沖縄県知事と近くの席にいたティラーソン国務長官にもあいさつしました。長官は前日議会の承認を受けたばかりで、他の閣僚は承認が遅れたり、賛否同数となり上院議長でもある副大統領の賛成票で承認された閣僚もいます。大統領に安易に動じない立法府の威厳も行使されています。
 在外投票拡大の取り組みで連携しているニューヨーク日系人会の竹田勝男副会長や「週刊NY生活」の三浦良一発行人は、移民や外国人労働者に対する規制強化によって、グリーンカードを得ている米国永住権所有者の遺産相続などの面での不利益の拡大や、日本人長期駐在員や派遣社員の在留の困難化を懸念しています。在米日本人を守る対策も重要になります。

大統領に近い議員らと個別に会談重ねる

 ピッテンジャー下院議員(左上写真右)は、トランプ大統領の減税政策、移民制限、オバマケア撤廃政策に賛同して支援を決めたと語りました。オバマ政権での税負担と過剰規制によりGDP成長率が1%台にとどまった失政を変えるためとも語りました。
 ルートゥクマイヤー下院議員は、トランプ大統領はスタッフや家族に思いやりが深く、労働組合とも丁寧な意見交換を行っていると評価。他方、両議員とも大統領の発信が国民に伝わらなかったり、誤解を与えることも多いので、その是正を支援したいと語りました。
 アーミテージ元国務副長官は、トランプ大統領の政策には是々非々で臨むと語りました。安倍総理のハワイ真珠湾訪問を評価しつつも、帰国直後に稲田防衛大臣が靖国神社を参拝したことで、その意義が薄められたのは残念だと述べました。
 フランク・ジャヌージ・マンスフィールド財団理事長は、トランプ大統領の政策の是非以上に、大統領の忍耐力のなさや激しい気性が気になると打ち明けてくれました。
 国務省のヤング日本部長は、オバマ前大統領の広島訪問と安倍総理のハワイ訪問に相互関連はないが、意義ある訪問だったと述べるとともに、日本における野党の役割は大きいと語りました。

投票者との契約

 トランプ大統領の「投票者との契約」という選挙公約の大統領就任1日目の政界浄化施策として、連邦議員の任期を制限する憲法修正案、ホワイトハウス役職員・連邦議員の退職後5年間のロビイング禁止、ホワイトハウス役職員の外国政府のためのロビイングの永久禁止などがあります。日本のような天下り問題が起こり得ないような大胆な政策です。貧しい白人貧困層などの怒りの受け皿として、既成政治の打破への期待から大統領に就任したトランプ大統領ならではの政策です。
 世界中で国民の怒りが国のトップを代えています。日本でも民進党が国民とともに闘い、国民の怒りの受け皿となって政権交代を目指す正念場の年です。多面性と意外性に富むトランプ大統領の良い面は評価し、危うい面は冷静に注視しながら、これまでの政権以上にトランプ政権との継続的な関係構築を続けて行く必要性を痛感しました。
(※)イラク・シリア・イスラム国

(民進プレス改題22号 2017年2月17日号より)

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