人への投資


 私たち国民が持つ将来への不安は、短期的には消費、長期的には人口動態に表れます。将来不安を払拭(ふっしょく)すれば、消費も上向き、家庭を持つことのハードルも下がり、必ずや経済成長につながります。そこで大切なのが、「人への投資」です。知識とイノベーションを生み出す主体である「人」を育て、成長させることこそが、経済成長のエンジンとなるのです。

将来不安を払拭し、チャンスをつかむ

 2016年度第3次補正予算では税収が1・7兆円も下方修正されました。各種世論調査でも、実に7割から8割の人が「景気回復を実感できない」と回答し続けています。このように、「将来不安」が拭えず、消費は伸び悩み、経済成長にはずみがつかないのが現状です。
 一方、AI(※1)やIoT(※2)などの活用といった第4次産業革命の流れの中で、日本の強みである分野で確実に勝負し、世界のプラットフォームを創造していくチャンスも見えてきています。こうした観点から、民進党は、「人への投資」を中心に据え、同時に、グリーン、ライフ、農業の6次産業化、その担い手としての中小企業といった産業政策の基本とも言える理念を具現化し、そこで働く人たちが希望と活力にあふれる好循環社会をつくります。世界と地域を見据えた「人間のための経済政策」を打ち出しており、その重点政策は次の通りです。

グリーンイノベーションを巻き起こす

 省エネルギーと再生可能エネルギーこそ成長戦略、地域再生の根幹政策です。日本には太陽光、風力、小水力、地熱、バイオマスなど自然エネルギーの源があふれています。日本の誇る高い技術力を十分に生かし、規制改革や普及促進策を組み合わせながら、省エネルギーや再生可能エネルギーの世界最高峰のモデルを構築し、国際貢献も行います。
 その方法として、福島第1原子力発電所事故の教訓を踏まえ、大規模集中型の電源への過度な依存から脱却し、地域分散型のエネルギー供給を中心とした循環型経済への転換を図ります。リスクを分散し、地域資源を活かしたエネルギー生産によりエネルギーセキュリティ(※3)を向上させます。
 そして、「地域を起点としたエネルギー革命」を実現し、地域のお金を地域内で循環させ、雇用を生み出し、地域を豊かにします。これまで地域の外に流れていた燃料代・電気代を取り戻し、それを地域で活用できる仕組みを構築することによって、地域経済の活性化につなげていくことを狙います。
※関連法案「分散型エネルギー社会推進4法案」

田園からの産業革命を巻き起こす

 農業分野に過度な経済至上主義の考え方を用い、性急に効率化・大規模化を進めるのは決して好ましいことではありません。現に、農業従事者の高齢化や、新たな担い手の不足などで日本の食料等の生産量はすでに減少傾向にあり、ここに歯止めがかからなければ、日本の農業は一気に衰退します。国内生産力を高めれば高めるほど、安全で安心な食べ物に直結し、ここをないがしろにした農業改革は本末転倒です。
 農業者戸別所得補償制度の法制化、農業の6次産業化、農地等を利用した再生可能エネルギーの利益を農林業再生産に活用する「田園産業特区」をつくることによって、まずは、農家の所得を安定化させることが必要です。そして、「農業の多面的機能を守る」「農村を守る」という農政の基本を堅持しつつ、「味」「食の安全」などを武器に世界で勝てる農業を構築していく。これが「田園からの産業革命」です。

企業行動に変革を巻き起こす

 日本にとっての最大の資源は人です。長時間労働が仕事と家庭の両立、女性の社会進出を阻み、仕事の効率性を下げていると言われています。「家に寝に帰るだけ」という長時間労働を是正することをはじめ、「働く者」の立場で企業の雇用慣行を見直すことが時代の要請です。
 また、同じ価値の仕事でも、非正規雇用などを理由に賃金が低くなることが多く、不公平が生じています。女性の平均給与額は男性の約7割しかなく、賃金格差は大きく開いたままなのが現状です。同じ価値の仕事をすれば同じ賃金が支払われるよう、「同一価値労働同一賃金」の確立は急務となっています。
 そして、日本の企業の99・7%は中小企業です。中小企業なくして地域振興も経済成長もありません。中小企業の担い手を増やし、持続可能な社会を実現することが日本経済の原動力になると考えています。この中小企業が、新たな人材を採用する際の壁に挙げるのが社会保険料の事業主負担です。これを軽減することにより、中小企業の優秀な人材確保を後押しし、被雇用者の長期的なライフスタイルを安定させます。そして、地域社会の充実化を図り、地域経済の好循環を生み出します。
 こうした働く人重視の改革は、一人ひとりの能力が最大限発揮できる環境をつくり、中長期的な生産性の向上へとつながっていきます。
※関連法案(a)「長時間労働規制法案」、(b)「中小企業社会保険料負担軽減法案」

 民進党が提案する「人への投資」を中心とする施策の実現は、経済・雇用・産業の分野でも成長ドライバーとなり、好循環を生み出していくのです。

(※1)人工知能 (※2)家電などさまざまな物がインターネットに接続され、情報交換によって相互に制御する仕組み (※3)必要なエネルギーを無理なく安定的に確保すること

(民進プレス改題23号 2017年3月17日号より)

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