経済再生



 東日本大震災から丸6年。復興・創生期間に入った今、被災地の復興はどこまで進んでいるのか?岩手県大船渡の水産業を中心に、各地の現状を報告する。

 岩手県大船渡市の鎌田水産は、サンマやホタテなど三陸の水産物を扱う水産加工会社。水産加工を中心としながらも、大船渡のサンマ漁(水揚量本州1位)をけん引する、地元水産業界のリーダー的存在である。
東日本大震災では、鎌田水産も甚大な被害を受けている。工場や設備、在庫、資材などのほとんどが流出、養殖場も壊滅状態だった。

たった1年で事業再生できた理由

 予期せぬ自然災害に強いられたゼロからの再出発。それでも鎌田水産は、わずか1年で経営の立て直しを実現させた。
 鎌田水産の鎌田和昭会長は、当時をこう振り返る。
 「震災直後、私は9月のサンマ漁に間に合わせるよう、最低限の資材確保を指示しました。『この緊急時に何言ってるの?』という反応でしたが、何事も援助を待っていてはダメ。常に自ら動くべきです」
 鎌田会長の姿勢は資金調達面でも同様で、国の復旧支援公募にも一番に手を上げた。
 「事業再生に行政支援は不可欠でした。その点、政府が被災地の現状を理解し、現実にかなった支援策を迅速に進めてくれたことには、とても感謝しています」
 当時の民主党政権は、「グループ補助金」をはじめ、水産加工業再生のための思い切った財政支援策を次々と打ち出した。大船渡市など岩手県第3区選出の黄川田徹衆院議員が補足する。
 「それまでにあった制度では、公の補助金を個人の財産形成に使うことはできない。だから、船はもちろん、ロープや網などの資材が必要な水産業者に、すぐにお金が回る制度が必要です。私たちは、グループ化した地元企業には地域経済を担う公益性があるとして、グループ補助金を立案。事業者に直接届く補助金制度を実現しました。地元の水産業者さんたちの機敏な動きと私たちの用意した補助金制度がうまく働きあって、迅速な復興の実現へとつながったと言えます」

水産業を次世代につなげるために

 数々の革新的政策にも支えられ、復旧から復興、さらには発展の道を歩む大船渡の水産業。その未来に向けたさらなる立て直しには、何よりも若手の育成がカギになると鎌田会長は言う。
 「震災後、若手後継者が戻ってきて、大船渡は活気を取り戻しつつあります。しかし、震災を契機とした人口減少に歯止めをかけるためには、後継者世代によるさらなる立て直しが不可欠。私は彼らに働きかけ、未来を切り開く社会づくりに貢献していきたい。産業や地域社会は、自分たちの代で完結するものではなく、次世代につなげていくべきものだから」

宮城・福島県の復興状況と課題

 発災後、10万人を超える避難者を出した宮城県。現在の避難者数は2万人まで減っているが、復興はどの程度まで進んでいるのか。宮城県第1区選出の郡和子衆院議員に話を聞いた。
 「避難中の2万人についても、転居先の見通しがつき、住宅再建にはかなりのめどが立ちました。常磐道、仙石線、石巻線など、途切れていた道路・鉄道が全てつながり、新設校が次々に開校するなど、インフラ面では復興が目に見えてきています。一方、離半島では、人口流出に歯止めがかからなかったり、津波に襲われ居住できない被災区域の利活用に課題が残っています。地域産業は、いったん途絶えた販路、人口減少、高齢化などさまざまな困難を抱えています。現状はさまざまで、廃業に追い込まれた方もいれば、何とか再建を果たした方も多い。その中でも明るい光は、宮城の産業・文化を世界に発信するような新規事業、商品企画が続々と生まれていること。今宮城では、被災経験をバネとして、新たな文化・コミュニティーが創造されつつあります」
 また、岩手、宮城県が復旧から復興へとステージを替えつつある今、原発事故という未曾有の困難を抱える福島県の現状について、福島県連代表の玄葉光一郎衆院議員に話を聞いた。
 「原発事故を経験した福島が抱える問題は、被災した他県と比べ、さらに多様で複雑です。福島第1原発廃炉をはじめとする果てしない難題を抱えつつも、大半の人々にはごく普通の日常生活がある。この辺の大きなギャップがさまざまな誤解を生みだしており、福島の現状を語ることは、デリケートにならざるを得ません。復興に関しては、避難者が半数近く戻ってきて、本当に少しずつ前進しています。今特に感じていることは、震災当時、私たちが種をまいた政策や行動がやっと芽を出し始めたということ。道路などのインフラ整備をはじめ、当時から構想していた最先端の医療や環境、再生エネルギー開発の拠点となる研究施設もできてきました。これらの研究開発は、大震災と原発事故という人類史上例のない体験を持った福島県民が、ピンチをチャンスに変えるための契機となるでしょう。人類史上最悪の原発事故を経験した福島で、これら難問を克服する最先端の知性と技術を生み出したい。私たちはこのようなビジョンを持って前に進み続けます」

(民進プレス改題23号 2017年3月17日号より)

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