参院予算委員会で27日、安倍内閣の基本姿勢についての集中審議が行われ、民進党・新緑風会から桜井充議員が質疑に立った。

 桜井議員は、安倍総理が深い付き合いをしている加計学園グループの岡山理科大学が、政府が進める国家戦略特区で獣医学部を新設することを取り上げた。この獣医学部を新設するのに「用地も無償譲渡」「36~37億円相当」と国の負担する金額をあげ、市の負担も「平成35(2023)年までの間に最大96億円の補助を行う」と多額の補助が行われることを説明。獣医師会も獣医学部を新設することに反対している話も挙げ、「獣医師定数を満たしているのでこれは必要ないという中で出来上がっている」と獣医学部を新設することへの疑問点を示した。

 桜井議員は、構造改革特区の時には獣医師の数が足りているとして獣医学部の設置に否定的だった政府の対応が変わった理由を明らかにするよう求めた。これに対して松野文科大臣は、「大学全体の課題として対応すべきとの考えから文科省で検討を行ってきた」と答弁。桜井議員は、「その通り、地域の偏在ではなく全体として考えていかなければならないから構造改革特区になじまないと認めなかった。それが国家戦略特区になってからねじ曲げられた」と指摘した。

 桜井議員は、既存の獣医学部を卒業して新薬を2剤創った方がいることを紹介し、「いまさらライフサイエンスがどうと言って、獣医学部を卒業されて社会で一生懸命やっている方に失礼になると思う」と、あえて国家戦略特区で獣医学部を新設しなくても、十分にイノベーションが生みだされていることを指摘。これに対して、山本地方創生担当大臣は、動物研究の創薬などで日本が他国に比べて後れをとっていることを説明し、「そのことを示す意味でも世界の大学ランキング(上位50大学)があるが、日本の大学は34位に東大が入っているだけで、獣医学部は国際競争力がまだまだ十分でないので新しい学部をしっかりつくることに意味がある」と答弁した。この答弁に対して桜井議員は、「大学関係者が聞いたら相当怒る」と批判し、「新しいニーズが生まれたら全て新しい大学をつくるのか」と政府のちぐはぐな対応に怒りをぶつけた。

 国家戦略特区で獣医学部の新設を1校だけに定めていることについて桜井議員は、「1校に定めるのはいつどこで誰が決めたのか」と質疑。これに対して山本地方創生担当大臣は、文科大臣と農水大臣に相談したと述べたうえで、「はっきりと日時は特定できない」と答弁。桜井議員は「省内で議論した記録というか形跡がない。どうやってこういったことが決められるのか明確にしなければいけない」と不透明な意思決定を批判し、詳細資料の提出を求めた。