公共交通の在り方を考える


公共交通政策で地方を再構築

 人口急減や超高齢化に直面するわが国で、これらの課題に対応するまちづくりをするには交通政策の役割が非常に重要です。そこで2013年に施行された交通政策基本法の推進状況に焦点を当てました。

民主党時代から訴えてきた交通基本法制

 民主党(当時)は2000年から、移動の権利に加え、安全・円滑・快適な移動という原則にのっとり、利用者の立場に立って、施設整備及びサービスを提供することを基本理念として掲げた交通基本法案の検討を始めました。02年(第154通常国会)、06年(第165臨時国会)と法案を提出しましたが、いずれも廃案となりました。
 民主党政権時の11年3月8日(第177通常国会)には「交通基本法案」として閣議決定し、国会に提出しましたが、その3日後に東日本大震災が発災するなど、さまざまな情勢変化を受け廃案となりました。
 政権交代後も民主党はその必要性を訴え、「交通基本法案」を議員立法で13年(第183通常国会)に提出し、政府は民主党案に修正を加えた上で、「交通政策基本法案」を同年11月1日(第185臨時国会)に提出し同年11月27日に交通政策基本法が成立しました。

交通政策基本計画の基本的方針

 同法に規定する交通政策基本計画は、同法が提示する交通政策の長期的な方向性を踏まえつつ、政府が今後講ずべき交通に関する施策について定めるものです。
 現在実行されている交通政策基本計画の期間は14年度から20年度です。その計画は、A豊かな国民生活に資する使いやすい交通の実現B成長と繁栄の基盤となる国際・地域間の旅客交通・物流ネットワークの構築C持続可能で安心・安全な交通に向けた基盤づくり?の3つの基本的方針を柱としています(表参照)。
 一例を挙げますと、基本的方針Aの「豊かな国民生活に資する使いやすい交通の実現」には、「自治体を中心にコンパクトシティ化等まちづくり施策と連携し、地域公共交通ネットワークを再構築する」という目標があります。この目標に取り組む施策の例として、「コンパクト+ネットワーク」の形成に資するため、「地域公共交通網形成計画」と「立地適正化計画」の着実な策定を促し成功例の積み上げにつなげる等があります。取り組みの進度を確認する数値目標として、20年度までに「地域公共交通網形成計画」の策定数を100件と定めていますが、17年3月時点ですでに273件となっており、施策に取り組む自治体の数が予想を上回っています。同法第9条は地方公共団体に対して、まちづくりの観点も踏まえ、交通網の再構築などについての施策を策定し実施する責務を定めています。その他に施策の推進に当たって特に留意すべき事項として、・適切な「見える化」やフォローアップを行いつつ、国民・利用者の視点に立って交通に関する施策を講ずる ・国、自治体、事業者、利用者、地域住民等の関係者が責務・役割を担いつつ連携・協同する ・ICT等による情報の活用をはじめとして、技術革新によるイノベーションを進める ・2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催とその後を見据えた取り組みを進める――などを定めています。

表


地域の経営感覚が必要

 大切なのは、地域がそれぞれの事情に応じた施策を講じることで、例えばコミュニティバスを導入するにも最適なダイヤやルートづくりなどを経営感覚を持って定めることです。
 また、人口減少が続き公共交通空白地域の拡大が深刻です。例えば、バス停と駅の両方から1キロ以上離れている地域の人口は236万2千人、その居住地面積は1万7084平方キロ(09年度国交省調査)と広大です。こうした問題を考慮しつつ、国、自治体、住民の努力によって、交通網と街づくりをフィットさせていかなければこの計画は何だったのかと問われることになるでしょう。

JR北海道の再生と改革

 昨年11月に10路線13区間の維持困難路線を発表したJR北海道。なぜ、JR北海道はこのような事態に陥ったのか。党JR北海道路線維持検討小委員会座長の荒井聰衆院議員に話を聞きました。

荒井聰(あらい・さとし)衆院議員

荒井聰(あらい・さとし)衆院議員

金利低下が原因

 国鉄改革時、JR各社に営業収入の1%の利益が出るように収益調整措置がされました。本州3社(JR東日本、東海、西日本)は黒字が見込まれるため国鉄長期債務の一部を承継し、さらに新幹線使用料を支払うこととし、3島会社(JR北海道、四国、九州)は赤字が見込まれるため債務を承継せず経営安定基金を受けました。それが30年後、本州3社は数千億円の経常利益を出す一方、JR北海道は赤字のまま。これだけ大きな差が出る原因は、金利の低下です。本州3社は金利低下による利子負担軽減の恩恵を受けましたが、JR北海道は基金の運用益減少という不利益を被りました。

JR北海道の経営責任

 もちろん、JR北海道の経営責任は否定できません。JR北海道は民間的な意識を持ち切れず、地域やお客さまに十分寄り添えていなかったように思えます。例えば、ダイヤ編成や車両編成はお客様のためというよりは、経費削減が優先されたのではないでしょうか。ただ、従業員数や給与の削減、生産性の向上などのJR北海道の経営努力は評価したいです。

国鉄改革の再検証を

 国は国鉄改革後10年で検証を行い、国鉄清算事業団が承継した国鉄長期債務や年金の大きな改革をしましたが、20年目、30年目は検証されていません。国は基金の積み増しや資金の支援などの累次の措置を行っていますが、これでは問題の根本的な解決になりません。今、国鉄改革を再検証し、新たな枠組みを作る時期に来たのではないでしょうか。個人的なアイデアですが、民主党時代に作った原賠機構法に基づく賠償スキームのように、JR各社で金利変動分の調整のために補償し合う形を作ってはどうでしょうか。JR北海道には、沿線地域と協力し合い、外国および道外からの集客に向けた施策を期待したいです。

(民進プレス改題26号 2017年6月16日号より)

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