農業の現状と民進党の取り組み


急速なスピードで縮小を続ける 日本農業は、いま危機的状況にある

 農業は、米や肉、乳製品、野菜、果物など、私たち誰もが生きていく上で欠かせない食料等をまかなうための最も基本的な産業。民進党は、安心・安全な農業の持続的発展を目指す。

 今、わが国の農業は危機的な状況にあります。1965年に全国で600万ヘクタールあった耕地面積は、2015年には450万ヘクタールへと、150万ヘクタールも減少してしまいました。また、65年には全国で1151万人いた農業就業人口は、15年には210万人へと、5分の1以下の人数に激減しています(図①)。わが国の農業は、急速なスピードで縮小を続けており、このままでは存亡の危機に陥るといっても過言ではありません。その結果、日本のカロリーベースの食料自給率は39%と、主要先進国(米国127%、ドイツ92%、英国72%)と比較しても、著しく低い水準にあります(11年データ)。国民と国を守る安全保障の観点から、危険な状態です。

 わが国の農業を守ることは、決して農業従事者の利益だけが目的ではありません。安全かつ新鮮な食べ物を求める全国の消費者・生活者にとって極めて重要なことなのです。

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民主党政権で誕生した農業政策の新しい風

 95年に食糧管理法が廃止され、これまで政府が管理してきた米の価格形成は、自由な市場に委ねられるようになりました。また、80年代から始まったウルグアイ・ラウンド以降の貿易自由化の流れもあり、農家の経営は次第に圧迫されるようになります。これに対して自民党政権がとった対策は、大規模農家だけを対象にして、経営安定対策を講じるというもので、農業の効率化・大規模化を、急速に推し進めることを目的としたものでした。

 もちろん、効率化・大規模化を進めることにより、農業の競争力強化と、農産物の貿易自由化の両立を目指すこと自体は、一概に否定されるべきものではありません。しかし小規模農家の存在と、安心・安全な食べ物を求める消費者の存在を軽視して、急速な変化を生じさせることは、わが国の農業と、消費者の生活の破壊につながりかねない行為です。

 その点で、09年に誕生した民主党政権は、わが国の農業政策に新しい風を吹き込みました。その象徴が、後ほど説明する農業者戸別所得補償制度です。

 その後12年から始まった第2次安倍内閣により、民主党政権時代に導入した諸政策は葬り去られようとしていますが、私たち民進党は、民主党政権で導入しようとした農業政策をさらにバージョンアップし、あらためて提案をしているところです。

いま民進党が目指す持続可能な農業政策とは

 苦労して農産物を育てあげても、要した生産費や労働費より安い値段でしか売れないことが少なくありません。効率化・大規模化を推し進めることにより、生産費や労働費を下げることができるのならば、その問題は解決するのかもしれませんが、一朝一夕に実現するものではありません。その間、コスト割れの状態が続けば、農業を続けていく人は誰もいなくなります。このことについて、恒常的にコスト割れをしている作物を対象とし、生産費と販売価格の差額を交付する制度が、民進党が議員立法として提案している「農業者戸別所得補償法案」です。

 具体的に米の制度を例に模式化したのが図②(米の所得補償交付金・収入減少影響緩和交付金)です。ここにあるように、過去の標準的な生産費(労働費を含む)と、過去の標準的な収入額との差額(=恒常的なコスト割れ)を、まず「ゲタ」として交付します。ただしこれだけでは年によって米の値段は変わるため、米価の安い年にはさらにコスト割れを起こしてしまいます。それを補正する「ナラシ」とあわせ、2種類の交付金により、農家の経営が持続可能性あるものになるのです。

 自民党は、この農業者戸別所得補償政策を「バラマキ」だと批判していますが、そもそも、国民の食料と生活を守るコストが「バラマキ」なのでしょうか。農業者に直接支払いを行う制度は、欧米などの先進国で広く行われている普遍的なものであって、決して「バラマキ」ではありません。

 その一方で、時代の変化に応じた新しい農業へと生まれ変わるための取り組みは行わなければなりません。農山漁村の新しい価値を生み出すとともに、新たな就業の場を創出するために、農林漁業の生産(第1次産業)と、加工(第2次産業)や販売(第3次産業)との融合による新たな産業、いわゆる「農山漁村の6次産業化」を、民進党は推し進めます。

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安倍政権は、農業を他の産業と同一視

 安倍政権は、農業の成長産業化を加速させるため、内閣府の規制改革推進会議で農業政策の検討をさせました。その結果、政府は今年の通常国会で、「農業競争力強化支援法案」をはじめ、規制改革推進会議で検討した内容の法律を次々と成立させています。しかし、これらはいずれも、農業を他の産業と同一視し、急進的な成長産業化を目指すもので、一歩間違えば、国内農業を衰退させかねない内容を含んでいます。

 民進党は、国民が新鮮な食物を安心して取ることができるために、何より農業の持続可能性を重視して、農業の発展を目指します。

(民進プレス改題27号 2017年7月21日号3面より)

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