地域資源を生かす、地域再生の切り札
分散型エネルギー社会推進4法案

 大規模集中型の電源にあまりにも依存した結果、東京電力福島第1原発事故の後、計画停電を行わざるを得なかった日本の電力システムの反省を踏まえ、分散型エネルギー社会推進4法案は、リスクを分散し災害に強い国を作るとともに、エネルギーの中東依存を脱し、地域の資源を生かした分散型エネルギー社会を構築することにより、地域のお金を地域でまわし地域再生・地域活性化を行おうとするものです。

地域の資源を生かす

 日本は太陽光、風力、地熱、木質バイオマスなど自然エネルギーの宝庫です。現在は、多くの地域がエネルギーを外から購入することにより地域の収支は大幅な赤字となっており、疲弊の原因となっています。しかし、地域資源を生かした発電・熱利用により、外部からのエネルギー購入を減らすことで地域はもっと豊かになれます。民進党は、地方分権は権限と財源だけではなく、電源も分権化すべきであると考えています。この4法案は、エネルギーの地方分権を進める法案にもなっています。

分散型エネルギー利用促進法案

 東日本大震災、福島第1原発事故の教訓として、大規模集中型中心のエネルギー施策からの脱却を目指し、地域エネルギー源を効果的・効率的に活用してエネルギーの地産地消・分散型エネルギー利用を推進するものです。これにより、地域の資源や人材を活用し、それによる利益を地域に還元することで、雇用機会の創出、地域経済の活性化による自立的で個性豊かな地域社会の形成を目指します。

 具体的には、都道府県と市町村が分散型エネルギーを推進するための計画を策定し、これに対して国から自由度の高い交付金を支給する仕組みになっています。これにより、自治体自らが系統や熱導管などのインフラを整備することもできますし、再生可能エネルギー事業者への支援を行うことも可能です。結果として、各自治体の特性に応じた分散型エネルギーの推進、エネルギーの地産地消、自給自足を進めることが可能となります。地域再生の切り札にもなる法案であると考えています。

エネルギー協同組合法案

 分散型エネルギー社会を作る上で重要な役割を果たすのがエネルギー協同組合法案です。ドイツをはじめとするヨーロッパでは、再生可能エネルギーを行う主体の多くは地域の人が出資してできたエネルギー協同組合が担っています。これにより地域のお金が地域に還元され、地域が豊かになっています。

 日本の協同組合は縦割りで、生協、農協、漁協など、分野別になっていて、エネルギーを作ることを主な目的とする協同組合の設立ができませんでした。また、NPO法人に対して第三者は出資ができず、株式会社は営利目的で意思決定も持ち株数によるなど、他の法人では地域のニーズを満たさないという問題がありました。エネルギー協同組合法の成立を願う声はとても大きく、協同組合関係者や市民発電事業者などとの意見交換を踏まえ、少人数での設立を可能とするなどの工夫を行っています。

公共施設省エネ・再エネ義務化法案

 建物の断熱性能が諸外国に比べて低く、「穴の空いたバケツ」状態になっていることから、国・独立行政法人の建物について実施目標を定め、最も厳しい断熱基準を定めるとともに省エネ機器を導入し、エネルギー使用の20%以上を再エネで賄うことを義務付けるものです。新築の建物だけでなく、既存の建物についても各省庁が改修計画を策定し30年までに全ての建物で改修を終えることとしています。なお、地方自治体については努力義務としています。これにより、断熱材や省エネ機器の増産によるコストダウンによる民間への波及が期待され、日本全体の建物の断熱性能の大幅向上、ゼロエネルギー化の早期実現が可能となります。

熱エネルギー利用促進法案

 日本では熱の利用はヨーロッパよりも遅れており、多くの熱が使われずに無駄となっています。これを有効活用すれば大幅な省エネルギーが可能です。日本保温保冷工業協会によれば、工場の配管に設置する保温材の劣化により、国内の製造業が消費するエネルギーの3%程度が無駄遣いされている可能性があり、これは原発7基がフル稼働した電力に相当するとの指摘もあります。また、ヨーロッパでは火力発電所は発電だけでなく熱(お湯)も供給し、90%近い効率を達成していますが、日本の火力発電所は発電のみで、効率は40%程度にとどまっています。さらに、日本の建物の断熱性能は非常に低く、断熱を強化するだけで大幅なエネルギー削減が可能です。農業分野でもビニールハウスの加温に膨大なエネルギーが使われています。ビニールハウスの熱源を重油から地中熱利用に変えるだけでも大幅なエネルギー利用削減が可能です。

 エネルギー利用に関する基本理念の確立(使用抑制、効率的利用、地産地消、情報公開等)、廃熱・再生可能熱の利用促進、廃熱をエネルギー源として法的に位置付けること、廃熱発生量の公表制度などを定め、熱の漏れを防ぎ、廃熱や再生可能熱をしっかり利用し、総合的に熱利用の促進を図ります。

 紹介した4法案によって、日本各地で興りつつあるエネルギーの地産地消・自給自足の動きを加速し、民進党の政策である30年代原発稼働ゼロを目指すとともに、30年に再生可能エネルギー30%以上、温室効果ガス1990年比30%以上削減を実現します。


福島 伸享(ふくしま・のぶゆき) 党エネルギー環境調査会事務局次長  衆院議員

福島 伸享(ふくしま・のぶゆき)

党エネルギー環境調査会事務局次長  衆院議員

 民進党は、国会にエネルギー協同組合法案を提出しております。この法案により、固定価格買い取り制度(FIT)の導入等で再生可能エネルギーの導入が飛躍的に進み、電力・ガスシステム改革の実現で多様なエネルギービジネスの可能性が広がります。例えば、ある地方で発電された再生可能エネルギーを、都会の消費者が協同組合を作って共同購入することができるようにしたり、農山漁村で地域の住民が出資し合って太陽光、バイオマス、小水力などの発電設備を作って電気を販売することができるようにするものです。

 この法案が実現すれば、消費者が主導的に電源を選択できたり、売電等の利益を地域で共有・配分することで地域活性化を図ることができるなど、分散型エネルギー社会の実現に大きな役割を果たすこととなります。民進党は、電力・ガスシステム改革を、大企業ばかりが利益を上げるのではなく、消費者や地域の利益につながる本質的な改革にしていきます。



田名部 匡代(たなぶ・まさよ) 党エネルギー環境調査会副会長  参院議員 

田名部 匡代(たなぶ・まさよ)

党エネルギー環境調査会副会長  参院議員 

 東日本大震災以降、エネルギーの安定的な確保や自給率の向上はより重要性を増しています。現在は国内エネルギーのほとんどを海外に依存していますが、わが国には世界に誇る技術力と豊かな自然環境があります。それらを活用し早急にエネルギーの安定供給体制を確立すべきです。

 民進党が提案する「分散型エネルギー社会推進4法案」は、太陽熱、風力、水力、バイオマス等再生可能エネルギーの拠点を地域に分散させ、リスクにも備えた地域循環型のエネルギーの安定供給であり、地方に新たな活力を生み出すものと考えます。 私の地元青森県の平川市では、リンゴの剪定(せんてい)枝や間伐材等を活用したバイオマス発電所の廃熱を、トマト栽培用のビニールハウスで活用するなど、農業とエネルギーを結びつける取り組みも行われており、地場産業との共存共栄で新たな地域雇用も生み出しています。

 未来を見据え、それぞれの地域が持つ自然の恵みを生かし、安全安心で持続可能なエネルギー政策への取り組みにより、国民生活と未来を守ってまいります。

省エネ・再エネ拡大策も検討中

 現在、この分散型エネルギー社会推進4法案に加えて、省エネ・再エネ拡大9法案の検討も進めています。

再生可能エネルギー自治体・住民参加法案(仮称)

 再生可能エネルギーによるエネルギーの地産地消・地域経済循環が、地域に大きな経済効果と雇用をもたらすことから、再生可能エネルギーを地域の資源と捉え、再生可能エネルギー発電に自治体や住民の参加を求めることができるようにします。

ソーラーシェアリング促進法案(仮称)

 ソーラーシェアリングは、農地での作物の生産と発電の両立が可能であり、持続可能な農業にも寄与します。ところが、農地法上の一時転用許可が3年更新であるため金融機関からの支援が得られないなどの問題があることから、最長20年の一時転用許可を可能とする措置などを講じ、ソーラーシェアリング導入を加速します。

田園からの産業革命法案(仮称)

 農村での農地等を活用する特例を設けることによって再生可能エネルギーの導入を図り、その利益を活用して農業の高度化等を図ることにより、食料・エネルギー産業一体となった地域循環型産業の発展を図り、農村の活性化を実現します。

建築基準法・建築物省エネ法改正案

 建築物省エネ法案は、一部の大規模建築物のみを対象とし、戸建て住宅は対象外となっています。一方で、日本の住宅でのヒートショックによる死亡は年間1万人を超えるとも言われており、健康で快適な生活を送るためには戸建て住宅での断熱強化が急務です。全ての建築物の断熱を義務化し、健康で快適な生活を実現します。

河川におけるエネルギー利用促進法案(仮称)

 河川は発電・熱利用に大きなポテンシャルがあり、安定的エネルギーとして持続的利用が可能です。エネルギーの地産地消を進めるため、河川の持つエネルギーの効率的かつ有効な利用(発電に利用されないダムでの水力発電の推進、熱利用の推進など)を進めます。

温泉におけるエネルギー利用促進法案(仮称)

 温泉は発電・熱利用に大きなポテンシャルがあり、安定的エネルギーとして持続的利用が可能です。一方で、エネルギー利用に関しては温泉の枯渇の懸念などから十分に進んでいません。エネルギーの地産地消を進めるため、温泉の持つエネルギーの利用を促進します。

地中熱利用促進法案(仮称)

 地中の温度は年間を通じて安定しており、地中熱を空調に利用することで大きな省エネ効果が得られます。また、温泉などの地熱とは違って、どこでも利用可能なエネルギーです。世界では多くの地域で地中熱の大規模な導入が進んでいますが、日本では導入が進んでいないため、その利用を促進します。

中小企業等の省エネ支援法案(仮称)

 技術の進化により、エネルギー効率の大幅な改善(省エネ)が可能となっています。中小企業は省エネできる部分が多いものの、さまざまな理由で機器の更新等が遅れています。中小企業の省エネを支援するための財政支援等の措置を講じ、省エネを進めます。また、大企業については、自主的な取り組みを後押しするような見える化等の措置により、さらなる省エネを進めます。

使用済太陽光発電設備の適正処理・再資源化促進法案(仮称)

 固定価格買い取り制度導入後、太陽光パネルの設置が爆発的に増加しています。今後、これらのパネルが耐用年数を超え、大量廃棄される時期を迎えることになり、不法投棄などの懸念を払拭するため、使用済み太陽光パネルのリサイクル(資源の有効利用)・適正処理を進めます。

 省エネ・再エネ拡大9法案により、省エネを加速し、再生可能エネルギー(特に再生可能熱、小水力など)の導入拡大、地域再生・地域経済の活性化を図ります。これら9法案は次期国会に提出を予定しています。

(民進プレス改題28号 2017年8月18日号4・5面より)

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