最新テクノロジーの意義と課題

 第4次産業革命がもたらす最新技術の必要性と意義、課題等について、北神圭朗、高井崇志両衆院議員に寄稿してもらった。また、経済・産業政策と雇用政策の一体的推進と中小企業・地域産業への支援強化政策の必要性を「2018年度 連合の重点政策」の指摘から紹介する。

第4次産業革命、科学技術政策の必要性について

北神圭朗(きたがみ・けいろう) ネクスト内閣府特命大臣(科学技術・IT・宇宙・海洋・中小企業)・党第4次産業革命小委員長・衆院議員

北神圭朗(きたがみ・けいろう) ネクスト内閣府特命大臣(科学技術・IT・宇宙・海洋・中小企業)・党第4次産業革命小委員長・衆院議員

 世界の経済成長を推進してきた本当の立役者は科学者です。第1次産業革命は、蒸気機関。第2次は電磁力と内燃エンジン。第3次はインターネットやレーザー。すべて科学の発明であり、これらが近代資本主義を推進し、戦後の高度成長期からリーマンショック前までの世界の成長を支えてきました。金融緩和も公共事業も、確かに数カ月から数年まで刺激的な効果がありますが、これはかりそめの繁栄に過ぎません。

 今は第4次産業革命の真っただなかです。これは人工知能の深層学習(ディープラーニング)、車の自動運転、ドローンなどの技術を意味します。今後、何十年間の経済成長はこうした技術がもたらすことになります。

 ところが、残念なことに、わが国はこれらの技術開発で後れをとっています。欧米だけでなく、中国などの後塵を拝しています。世界知的所有権機関(WIPO)の「技術革新ランキング」で、日本は14位と、決して高いわけではありません。英米はもとより、韓国や北欧の国々よりも遅れをとっています。

 わが国は、現役世代の人口が大幅に減少しています。こうした中で、経済成長を果たし、子々孫々の飯のタネを確保するためには、第4次産業革命をはじめ「技術立国」としての地位を取り戻すべきです。

 そのためにも、基礎学力をはじめ、理系の教育の強化を図りつつ、政府の研究開発支援の拡充と効率化を全力で推進します。科学技術政策に力を入れることによって、本格的な経済成長を促進します。

シェアリングエコノミー・フィンテックなど、世界で進む技術革新に機敏に対応を

高井崇志(たかい・たかし) ネクスト内閣府特命副大臣(科学技術・IT・宇宙・海洋・中小企業)・衆院議員

高井崇志(たかい・たかし) ネクスト内閣府特命副大臣(科学技術・IT・宇宙・海洋・中小企業)・衆院議員

 1995年の「インターネット元年」から22年が経過し、今や個人が気軽にITを活用する時代になりました。

 携帯からすぐにモノの売買ができるフリーマーケットアプリや、旅行者への空き部屋の貸し出し、子守やスキルの提供など、さまざまなサービスが展開され、既に利用された方もいらっしゃるかもしれません。 

 これらはシェアリングエコノミーと呼ばれ、個人が新たに収入を得られるようになっただけでなく、地域の課題解決に貢献するサービスも現れました。2017年には国内市場規模が400億円を超え、今後一層の市場拡大が予想されています。

 技術革新は世界中の経済・社会・文化構造を大きく変えています。フィンテックは金融のあり方を変え、国の通貨に左右されないビットコインを生み出しました。エストニアは、ブロックチェーンを利用した電子政府化を進め、AIは、2030年の凡用型登場に向けた研究開発競争が激化しています。 

 一方で、「既存業界との摩擦」「事故発生時の責任所在」そして「納税・課税」などの問題も生じています。

 特に、「雇用がAIに奪われるのでは」との懸念がありますが、「仕事を奪われるより、人材不足が補われ、社員が楽になる」と答える企業が多いとの調査結果があります。

 しかし、人手不足を上回る省力化が進めば、いずれ失業が生じます。それを防ぐには、AIをツールにした「新しい価値を生み出す企業」を増やさなければなりません。

 私たちは、競争が激化する世界の動向に機敏に対応するため、海外の法規制との整合性を意識しつつ、「挑戦する国内企業」への手厚い支援を行うと同時に、技術革新によってもたらされる新しい問題に対し、政治がどのような手当てを行うのか、危機感とスピード感を持って対策を練り、議論を重ねる必要があると考えています。

経済・産業政策と雇用政策の一体的推進および中小企業・地域産業への支援強化

 日本労働組合総連合会(連合)は「2018年度 連合の重点政策」のなかで、産業構造の変化に的確に対応するため、「労使が参画して検討する枠組みの構築と産業能力への支援強化」に関し次のように提言している(連合が6月15日に民進党に要請した対応策要旨)。

               ◇ ◇ ◇

 現在、IoT、ビッグデータ、人工知能等の技術革新といった第4次産業革命が急速に進んでおり、諸外国でも生産性の向上や高度化に向けた取り組みが加速している。わが国では、第4次産業革命が進展すると同時に、人口減少と超少子高齢化が進んでいる。技術革新を利用して生産性を向上させることが、労働力不足の緩和につながることが期待される。

 産業構造の変化に的確に対応するためには、企業の人的投資・設備投資・研究開発に対する政府支援の充実やわが国の産業を保護・強化するための知的財産制度の強化などを着実に進める必要がある。

 また、技術革新により、仕事内容や雇用形態の変化が想定される。まずは起こり得る変化への対応について検討するための、労使が参画する枠組みの構築が求められる。失業なき労働移動を可能にするとともに、格差の拡大が助長されることのないよう、ディーセント・ワーク(※1)を維持しながら全体の底上げが図られるよう検討を進めるべきだ。

 特に人的投資の重要性が今後ますます高まる中で、働く者の学び直しや職業能力開発は、企業が主体となり取り組むべきだ。しかし、企業の支出する教育訓練費はバブル期以降減少している。製造業を例に国際比較してみても、諸外国と比べその水準は低くなっており十分とは言い難い。企業の人的投資に対する積極的な支援が必要だ。その際には、包摂的な成長の観点から、雇用形態や企業規模による格差が生じないよう留意する必要がある。

 また、労働者個人の自己啓発では、時間的余裕のなさや費用負担が大きな障壁となっている。長時間労働の是正、有給教育休暇の制度化、学費の低額化や経済的支援などの環境整備を行うことが必要だ。


※1 人間らしい生活を継続的に営むための労働条件。

(民進プレス改題29号 2017年9月15日号6面より)

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