衆院選後、民進党国会議員のいない都道府県連が25にのぼるなど、地域組織の運営に困難をきたす状況が生まれている。

 そうした状況下、統一自治体議員選挙に向けて、元民進党所属国会議員との連携体制を築いたり、地域政党づくりに向けた取り組みを模索する動きもある。岩手、神奈川、愛知、三重、滋賀、香川各県連の取り組みを聞いた。

■神奈川県連■  2大勢力の一翼を担う政治団体結成を目指す

神奈川県連幹事長 川崎市議会議員 雨笠裕治(あまがさ・ゆうじ)

神奈川県連幹事長 川崎市議会議員

雨笠裕治(あまがさ・ゆうじ)

 12月26日の両院議員総会・全国幹事会・自治体議員団等役員合同会議で3党連携の進め方について「そろそろ皆さん、評論家ではなく、プレーヤーに変わりましょう。党本部・地方組織が努力をして、どんな困難があろうとも、実現するまでやっていきましょう。交渉は最後の最後まであきらめない方が勝ち。今日の執行部の提案を確認していただきたい」と参加者全員に呼びかけました。

 その真意は、いまさら昔に戻るような話をしてもいかがなものか。大塚代表、増子幹事長は地方組織の話をボトムアップで聞くという方針を誠実に実行している。皆で一歩一歩少しでも進んでいき、民進党でしっかり活動していきたい。今年は皆に安心感を与えられるような年にしていきたいからです。

 衆院選を経ての神奈川県連の現状は、県連所属議員が87人おり、そのうち国会議員は4人です。一方、立憲民主に5人、希望に4人の国会議員がいます。今の国政の状況を踏まえると統一自治体選や参院選で候補者乱立が懸念され、それを回避しなければなりません。そのためには、地方自治体議会で現存する民進系会派の勢力を保持し、議員が結束することが重要だと思います。

 神奈川県連では、役員会から一任を受けた私が立憲、希望のそれぞれ複数の衆院議員と接触しています。他にも3党連携に向けた大きな枠組み作りに向け、さまざまな方々にもご努力いただいております。私たちの目標は、県内でも現与党勢力と対峙(たいじ)することのできる、2大勢力の一翼を担う政治団体を結成することです。なぜなら各級議会を1強の政治体制ではなく県民・市民のために緊張感のあるものにしなければ県民・市民本位の政治が実現することが難しいと思うからです。

 そうは言っても相手のあることですから、3党による統一会派や政治団体の結成は容易なことではありません。それでも民進党がその実現に向けてリーダーシップを発揮し続けることが重要なのです。連合もそれを見ています。「みんなのために交渉し、もう一度しっかりした野党にしていこうとしているのは民進党だ」と。連合の信頼を勝ち取ることが何よりも大切です。それが将来的には連合を動かし、その瞬間に全てが円滑に回り始めます。その潮目まで持っていきたいのです。

 それには、われわれが一枚岩の良い政党に生まれ変わることによって、向こうにいられない人たちが「やはり民進党だ」との思いをもち、入ってきやすい環境をつくることも必要です。政治団体化はスピード的に難しいかもしれませんが、粘り強く取り組んでいきます。

■愛知県連■ 相手は自民党。目指す政策実現へ 地域政党としてまとまっていく

愛知県連幹事長・県議団常任顧問 県議会議員 塚本 久(つかもと・ひさし)

愛知県連幹事長・県議団常任顧問 県議会議員

塚本 久(つかもと・ひさし)

 地方はいつも国政に振り回されるという感が否めません。今回の衆院選は、無所属、立憲、希望と3分裂して戦うなか、自治体議員は3党から立った仲間を困惑しながら応援し、選挙後も混乱に見舞われています。

 愛知県議会は32人、名古屋市会は17人の民進党議員団がいますが、衆院選の結果を受け入れて3党に引っ張られて今後活動すると分裂するのではないかとの危機感があり、それだけは避けたいとの強い思いがありました。

 そうしたなか、今までのような国、県、市の縦の連携ではなく、「横の連携を作ることが大事ではないか」との話があったこともあり、地域政党作りに向けて動き出しました。2月初めの立ち上げを目指し、会派名と地域政党名に関する意見集約や準備を進めています。県議会で3人、市議会で1人が立憲に移り、また名古屋市議補選で立憲から当選した議員がいて、そうした方々も巻き込める会派名を検討中です。また、約100人の一般市町村議員が加盟する政治団体・自治体議員フォーラムの在り方を見直し、再スタートすることも検討しています。

 衆院選で、立憲から出た人と希望から出た人とが敵対するかのような関係になってしまいました。そしてそれが今なお続いています。しかし、われわれの相手は自民党です。同士討ちのような現状は打開しなければなりません。愛知県議会102人中、民進党県議団は32人で自民党が圧倒的に強いです。まとまらなければダメなのです。そして、われわれが目指す地域政党は選挙目当ての野合ではありません。政策理念・綱領の下に集う仲間の結束です。

 自治体議員は今後、地域政党から3党の公認や推薦、あるいは無所属から立候補するといった具合で、候補者それぞれの立ち位置に拠ることになりますが、自民党と対抗するため、そういう方々が結集できる形を作っていきます。今回の衆院選で自民党は敵失によって1強色が強まった状況ですが、地域ではそれを何としても阻止したいと思います。地域政党が正式にスタートするときは3党の代表の方々にもご了解をいただき、要請をしていきます。

 連合愛知からもぜひ「地域政党を」と後押しいただいています。地域政党は連合と政策協定を結ぶ予定ですので、所属する自治体議員も当然連合と政策協定を結ぶことになり、連携しやすくなるという側面もあります。また地域政党をつくることで保守系無所属の方も入っていただきたいとも考えています。つまり、これまでの議員団の現状維持ではなく、新展開です。今後、地域政党の政策理念・綱領に賛同する仲間を増やし、議会で過半数を取れるように持っていきます。(2017年12月26日談)

■三重県連■ 17年間積み上げた「新生みえ」としての取り組みを継続

三重県連代表代行・新政みえ代表 県議会議員 三谷哲央(みたに・てつお)

三重県連代表代行・新政みえ代表 県議会議員

三谷哲央(みたに・てつお)

 会派としての「新政みえ」ができて17年。これまで三重県議会の最大会派として議会での議論をリードしてきました。「地域政党新政みえ」のスタートは、地方自治体議会が二元代表制であり、首長選等に会派として誰かを推薦するのはいろいろ問題があると考え、地域政党をつくり、政党として候補を推薦し応援する体制づくりが必要だということでした。政党として自立するためには地方自治体選挙で少なくとも5人以上公認候補を立てて、確認団体の資格を得て、ビラを配ったりポスターを張ったり宣伝カーを入れたりすることが必要です。選挙の時だけの政党ではだめなので、日常的に県政報告会を開いています。

 立候補にあたっては新政みえ公認候補に例えば民進党の推薦がついたり、逆に民進党の公認候補を新政みえが推薦したりします。共通しているのは候補者と新政みえと連合三重と3者で政策協定を結ぶということ。当選の暁には政策協定に基づいた行動をしましょうという約束で立候補し、連合も政策協定を結んだ候補者を全力で応援すると決めています。あわせて新政みえとしての共通公約「新政みえビジョン」をつくります。これを4年間実行すると有権者に約束します。「新政みえビジョン」本冊以外にも概要版等をつくり、「こういう約束でこれを目指してわれわれは行動するんだ、選挙もやるんだ」と有権者に訴えていくことを繰り返しています。

 また選挙時には各メディアの方に「『諸派』と書かないでほしい。『新政みえ公認』と書いてください」とお願いし、メディアも協力して候補者一覧に「新政」と書いてくれます。

 地域政党は政党交付金の対象ではありませんから、資金はわれわれ県会議員が拠出しています。日常活動は会派の活動と重なるので、政務活動費の会派分を活用しています。

 選挙目当ての集団と思われては、なかなか有権者の理解は得られません。大事なことは「われわれはこれを実現するんだ」と具体的政策を示すことです。新政みえで言えば4年間を見据えた「新政みえビジョン」を毎選挙時に発表し、その進捗状況を毎年検証し、結果を公表していく。最終年度にそれを総括して、その結果を翌年度の新しいビジョンに反映していくというサイクルです。そのことをきちっと有権者に示したうえで、「これを実現するためにこの集団を結成したんだ」ということを明確にしないといけません。つくるならできるだけ早くつくるべき。あまり選挙が近づいてからは誤解を生みます。それと、連合などの応援団としっかり連携して、信頼関係を構築し作り上げていくことです。連合からは地域政党から立候補する者に対して推薦状をもらうだけではなく、たとえ単組であっても何か応援団をつけてもらうことも大事です。

■滋賀県連■ 今こそ多くの地方自治体議員の結集をマイナスをプラスに変える!

滋賀県連事務総長 元県議会議員 江畑弥八郎(えばた・やはちろう)

滋賀県連事務総長 元県議会議員

江畑弥八郎(えばた・やはちろう)

 まず党滋賀県連の現状についてご報告します。昨年の総選挙の結果、1区の嘉田由紀子さん、2区の田島一成さん、3区の小川泰江さん、4区の徳永久志さんはいずれも惜敗し、県内選出の国会議員はゼロになりました。現在、前職の川端達夫さんには県連の顧問になっていただいています。田島さん、小川さん、徳永さんの3人はまだ希望の党の所属となっていますが、民進党県連の会議などにはオブザーバーとして出席していただいています。

 県連所属の自治体議員は、民進党が存続するということで、当面自治体議員もそこに結集しようということを県連の幹事会で意思統一しています。また最大の応援組織である連合滋賀とも何回か会合を重ねています。連合としてはぜひ民進党に存続してほしいということで組織内で一致しています。民進党が存続する中で、連合としっかりと絆を築くということで進めています。

 滋賀県内には、連合が推薦決定をした議員で構成している「連合議員団」があります。滋賀県連には所属議員が約50人いますが、そのうち40人が「連合議員団」です。もう一つ、三日月大造さんが知事選に立候補した時から続いている「チームしが」という政治団体があります。県議会での会派名も「チームしが県議団」となっています。これら「連合議員団」と「チームしが」をベースにして新たなローカルパーティーとして発展させ、そのローカルパーティーに民進党がリンクすることで、より多くの自治体議員が統一自治体選に出馬出来るプラットホームを作りたいと考えています。

 全国それぞれに立憲や希望色が濃いところとそうでないところと地域差があり、総支部を作ることが難しそうな地域があります。滋賀県連は国会議員がいないというマイナス面を、逆に言えば縛りがないということでプラスに変えて、民進党がしっかりと真ん中に立つことを目指していきます。そういう民進党の旗をしっかりと真ん中に立てることができる地域に本部としてメリハリを付けて支援してもらいたい。そうすれば民進党が中心となった組織を組める動きを活発化出来ます。

 最後に、5月には党員・サポーターの更新時期が来ますが、これにどう対応するかが大きな問題です。わが党の基盤である党員・サポーターを集めるためにも、民進党はこういう政党で、どのような社会像を目指していくのかなどを早急に示す必要があります。私たちも汗をかく覚悟です。大塚代表のリーダーシップに期待します。

■岩手県連■ 希望・立憲と友好関係を継続

岩手県連幹事長代理 県議会議員 高橋重幸(たかはし・しげゆき)

岩手県連幹事長代理 県議会議員

高橋重幸(たかはし・しげゆき)

 岩手県は衆院小選挙区が4から3に減るとともに、第1区の階猛議員が希望の党所属となったことで、民進党所属国会議員は現在ゼロです。

 そうしたなかで、民主党時代から毎年行ってきた、県下33市町村を回って地域の実情を聞き、県や国への要望書を提出する取り組みを昨年末も実施しました。県への要望は例年通り県議会議員が行いました。国への要請に向けた各省庁との調整はこれまでは国会議員が行ってきましたが、党所属国会議員がいないため、階猛議員事務所に依頼して12月15日に実現。党を越えた共同での仕事の第一歩でした。

 一方、街宣車がない希望の党への民進党からの貸し出しを検討中で、看板を簡単に着脱できないか貸借料をどうするか等の検討段階です。

 また、毎月1回行う県連常任幹事会の際、希望の党と情報交換の機会をもつことにしております。立憲は岩手県ではまだ県連組織も総支部組織もできていませんが、もし立ち上がった場合は、友好的な関係を結んでいこうというのが岩手県連の空気です。

■香川県連■ 「仲間は仲間」の気持ちを持ち続けることが大切

香川県連代表代行 県議会議員 山本悟史(やまもと・さとし)

香川県連代表代行 県議会議員

山本悟史(やまもと・さとし)

 香川は1区の小川淳也、2区の玉木雄一郎の両議員とも党決定通り希望の党に移り、混乱もありましたが、議席を得ることができました。

 その後、玉木議員は代表となり、香川が希望の党代表のお膝元になるという、一段と想定外の状態になっています。ただ、立憲民主党の動きは、今のところはありません。

 他の地域と比べると、比較的単純な政治情勢もあって、香川では国会議員の所属政党は変わりましたが、支援体制は変わらずに、現職2人を支えていくという形のままです。具体的には、毎月開催する常任幹事会、あるいは支援産別労組との定期的な意見交換会にも、小川・玉木両議員はオブザーバーとして参加しています。冗談でも「他党の人」と言っていると、やはり仲間意識が薄れていくと思いますので、こうした会合への参加依頼は、意識的にやっていくべきだと考えます。

 私は、結果的に他党に行った人も含めて、今でも仲間だと思っています。とにかく、われわれ民進党は太陽政策で、あたたかく大きな心で希望の党と立憲民主党の両党に対応していくべきだと考えています。

(民進プレス改題33号 2018年1月19日号4・5面より)

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