共謀罪

共謀罪、何が問題なのか
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「共謀罪」はテロ対策とは無関係

 このページは、政府が出してきた「共謀罪(テロ等準備罪)」法案の危険性を皆さんに正しく理解していただき、ともに反対の声を上げるために作成しました。
 政府は、「共謀罪」が、テロ集団や組織的犯罪集団だけを対象とするかのような説明をしていますが、実は一般の市民である私たちも対象となりうること、「共謀罪」が本来はテロ対策のためにつくられたものではないこと、「共謀罪」があればテロ対策が進むと手放しで評価できるものではないこと、日本のテロ対策で真に取り組むべきことなどを、項目ごとに解説しています。適切ではないこの法案に反対するとともに、真に実効性のあるテロ対策を進めたい、このことを皆さんと共有したいと思います。
(注)政府は「テロ等準備罪」と呼んでいますが、その本質は3度廃案になった「共謀罪」と何も変わっていないので、本冊子では共謀罪と表記しています。

共謀罪って何?ーあなただって標的にー

 「テロリスト集団などの組織的犯罪集団を処罰する」という政府の説明は本当でしょうか。

 現在の刑法ならば、友人同士の飲み会の代金を「接待」名目で会社に回し、精算されたときに「詐欺罪」が成立します。詐欺をはたらけば処罰されるのは当たり前です。ところが共謀罪ならば、A 君がB 君と相談したときに「共謀」が成立、組織的に詐欺をはたらこうとしていると認定されれば、テロとは関係なく、組織的犯罪集団による犯罪の計画と認定されてしまうのです。C 君に電話を掛ければ「実行準備行為」となり、「(組織的)詐欺の共謀罪」ですぐに検挙できるのです。実際飲み会が行われるかどうかもわからない時点であっても検挙できます。「やっぱりやめよう」と計画を中止しても通用しません。新入社員が会社の許可もなく行う接待の経費が実際に認められるわけもないのに検挙できるのです。
 政府は、これでも本当に政府は一般の人は対象にならないと言えるのでしょうか。共謀罪は、あなただって標的になるのです。冗談で言ったことも冗談で済まなくなるのです。

「テロ等準備罪」は共謀罪

 法律案には、「テロリスト集団等の組織犯罪集団」と書いてあります。しかし、「テロリスト集団等の」という言葉は、もともと入っておらず、国会に提出する直前に書き加えたのです。しかし、法律の目的が書いてある1条に「テロ対策」であることを示す規定は加わりませんし、法務大臣はつけ加えた「テロリスト集団」も例示にすぎないと言っています。簡単に言えば、「テロ対策」はただの飾りなのです。
 さらに政府は、「実行準備行為がないと処罰できない」と言っていますが、「実行準備行為」を1人でも行えば、その他大勢の人たちは共謀だけで処罰されます。実際は処罰されなくても、そのように疑われれば逮捕や尾行などの捜査の対象となります。結局「テロ等準備罪」と呼び名を付けてみても、以前の「共謀罪」と何も変わらないのです。

共謀罪は必要?テロ対策に有効?

 政府は、テロ対策のために共謀罪が必要と繰り返しています。しかし本当でしょうか。
 政府や与党は、テロ組織が活動を始めたときに、「現行法上対処できないと考えられる事案」という事例として次のようなことを挙げています。

 しかし、1.はサリン等製造罪の予備罪、2.はハイジャック防止法の予備罪があります。4.は殺人予備罪でも劇物毒物取締法でも処罰できます。最近では、法務省は新たな「対処できない事案」を示すこともしていません。つまり、277もの罪を「準備」以前の段階で処罰する共謀罪をつくる理由はなく、3.についてもプログラムが完成すれば処罰できるし、もしその前の段階での処罰が必要なら、未遂罪を1つ作れば済むことです。
 さらに共謀罪法案には大きな欠点があります。テロは必ず複数犯で計画して行われるものではありません。ローンウルフといわれる単独犯や自爆テロ犯も処罰できない「テロ対策」というのもピント外れとしか言いようがありません。

TOC条約が本当に求めていることは?

 国際組織犯罪防止条約(TOC条約)は、もともとマフィアや暴力団が行うマネーロンダリングや人身売買を処罰することを目的としてつくられた条約で、テロ対策とは関係ありません。この条約に加入するための国内法として政府は2003年に最初の共謀罪法案を国会に提出しました。
 10年以上前に共謀罪法案の審議を行っていた時、政府は「『4年以上の懲役・禁錮』を定めた罪はすべて共謀罪をつくらなければならない、対象犯罪を選別することはできない」と説明していました。それなのに、今回は「4年以上の懲役・禁錮」と定めた676の罪のうちから277に絞り込んだと前言撤回しています。しかし、277でも条約が求めている対応を逸脱する過剰な対応です。
 政府は、自分の都合の良いように条約を解釈したうえで、それに従わなければならないと国民を誘導しようとしているにすぎません。
 国連が出している条約立法ガイドには、“新しい犯罪の創設や実施は各締約国に委ねられている”と書いてあります。政府は日本の法律の中で義務を果たし、主権国家として日本が主体的に判断し、現行法で条約に入れば良いのです。
 ちなみに、条約締結のために共謀罪を創設した国は、たった2カ国、ノルウェーとブルガリアだけです。
 安倍総理は、「条約の国内担保法を整備し、本条約を締結することができなければ、東京オリンピック・パラリンピックを開けないと言っても過言ではありません」とまで言いましたが、条約締結は国際オリンピック委員会の要請でもありませんし、開催条件でもありません。オリンピックに便乗して共謀罪をつくろうとする安倍総理の強引で非論理的な主張でしかありません。

共謀罪が監視社会につながる

 今回の法律によって一番懸念されるのは、『日本が監視社会になる』ことです。
 この法律で罪とする「共謀」、すなわち犯罪の計画・相談があるかどうかを把握しようとすれば、どうしても盗聴や尾行など行動の監視が必要になるのです。
 つまり、この「共謀罪」法案と、通信傍受(盗聴)法の改正、さらに最高裁が立法を求めた「GPS 捜査新法」が組み合わさることで、監視社会が出来上がるのです。
 共謀罪捜査のために、監視が許されるようになれば、捜査側にとって一番容易なネット監視はすぐに始まるでしょう。皆さんがスマホやパソコンで行うメールやラインが対象になり、思い付きの冗談メールであっても、それを読むことや返信すること、スタンプを押すことでさえ計画の合意とみなされ、検挙・処罰につながりかねないのです。
 共謀罪法案の最大の問題は、このように監視社会になる懸念であり、やはりテロ対策とは直接関係ない趣旨で法律をつくろうとしているのではないかと言わざるをえません。

日本がテロ対策で取り組むべきこと

 前述の通り、TOC条約は国連がテロ対策として定めたものではありません。
 ちなみに、実は日本はテロ対策として国連で合意に達した18の条約のうちの主要な13条約はすでに締結を済ませています。締結のために、テロ対策立法も終えているのです。
 ところが、残る5条約のうち、すでに規定の数の国が締結して発効している2つのテロ対策条約については、政府はいまだに国会での議論にも乗せていませんし、条約締結のための国内法整備の議論も滞ったままです。総理がテロ対策の必要性を言うのであれば、この2条約の締結を優先して進めるべきです。
 テロ対策の必要性を言いながら、テロ対策条約を放置し、テロ対策と直接関係ない条約を持ち出すのは、順序が逆です。
 観光立国を唱えるならば、今やるべきは海外からの出入口となるところや、多くの人が利用したり、集まるところの安全確保を進めたりすることです。空港や港湾での出入国審査や鉄道・イベント会場の利用時の安全確認の充実が、特に急がれる対策だと考えています。
 とりわけ水際対策では、民進党がハイジャック防止のために提出した「航空保安法案」の考え方のとおり、空港での保安体制の責任を民間の航空主体に任せきりにせず、予算を含めて国がしっかり責任をもつ体制を整えることが有効です。

重大犯罪にしっかり対応する道を選ぶ

 現在の日本の刑事法体系は、罪を実行したことを処罰することが原則です(既遂犯処罰)。犯罪の種類によっては、犯行を失敗した場合(未遂)も処罰し、特に重大な犯罪については、例外的に、実行に及ぶ前の段階「予備」「準備」や「陰謀」「共謀」を処罰しています。

 テロ対策を進めるときも、刑事法体系の原則に沿って、重大犯罪に対して個別に根拠に基づいて「未遂」や「予備」「陰謀」を処罰の対象に加えるべきかどうかを検討すべきであり、こうした法制で重大犯罪にも十分対応可能と考えます。しかし、政府はこの方法をあらためて検討しようとすらしないことは、不思議で仕方がありません。
 条約が求めていると勝手な主張をして、対象犯罪が277以上の包括的な共謀罪をつくり、日本の刑事法体系の原則をひっくり返してしまうような立法を進めることが、安倍政権の考えなのでしょうか。

こんなことまで「テロ対策」?

 政府は、テロ対策のために共謀罪が必要と言っていますが、共謀罪の対象となる犯罪には例えば下記のようなものがあります(これまでの国会審議で明らかになっています)。このように、今回の法案にはテロとは関係ない犯罪も多数対象になっています。

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